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2005/12/13

機械上位

terminal知ってのとおり、みずほ証券が株の売買をするのに、「61万円で1株を売る」というのを「1円で61万株売る」とコンピュータに誤入力して、1円という安値で大量に売ってしまい、大問題になっている。この件で気になったのが、コンピュータの入力画面だった。テレビ報道でちらっと見ただけだが、小さい文字で取引価格と数量を入力するのだが、あまり見やすそうな(=確認しやすそうな)画面には思えなかった。誤入力したみずほの社員も不注意だったが、誤入力してもしょうがないような見づらい、使いにくい画面になっていなかっただろうか?

たとえば俺が以前、某大手コンピュータメーカーで働いていたとき、工場へ製品の発注をするときに使わなければいけなかったコンピュータ端末の入力画面がこんな感じだった。各種項目や製品名などはもちろんすべてダミーだが、使いにくさ(というかわけのわからなさ)はなんとなく伝わることだろう。
これには大型のコンピュータに接続された、文字しか表示できない端末機が使われていた。パソコンのWindows3.1すらなかった時代なので、表示が文字ベースになっていたのはやむを得ないとしても、画面レイアウトや表示される内容がいちいち見にくかった。
たとえば項目名が4行並んだ下に実際の入力行がさらに4行並ぶといった調子で、項目名と実際の入力欄との対応がわかりづらい。製品コードを入力すると、一応対応する製品名(図中の赤文字)が表示されるはずなのだが、データベースがしっかりしていないのか、表示されないことの方が多く、表示されても製品名自体がコードみたいな英数字の組み合わせなので、どのみちわかりづらい。どの顧客に対する注文なのかというのはオーダー番号で管理しているので直接顧客名は表示されないし、ソート機能すらないから顧客ごとにまとめて表示なんてこともできない(表示はあくまで入力順)。もちろんプリントアウト機能もない。
俺は当時こんな発注システムを使い、一顧客あたり20個ぐらいの製品で構成されたコンピュータシステムを70顧客分くらい入力し、管理しなければならなかった。しかも顧客ごとに微妙に製品構成が違ったんだよね。しょうがないからワープロで表を作ってそれと実際の入力を照らし合わせてチェックした。
こんな画面で20製品×70顧客=1400製品、しかも1製品あたり製品コードや希望納期などの項目を最低5個ぐらいは入力しなければいけないから×5として=7000項目ぐらいを一人で入力、管理していたのだから、当然集中力が途切れ、入力ミスが起こるのは当然だ。必要な製品が入力されていなかったり、数や納期を間違えていたりということがずいぶんあり、工場からずいぶん怒られたものだった。
そこで俺を責めるのは簡単だけどさ、あまりに発注システムの使い勝手が悪すぎないか? 7000もの項目を一字一句間違えずに入力するなんて至難の業だぞ(当然今みたいにコピー&ペースト機能なんてない)。その確認も狭くて見にくい画面上でするほかない。さらに顧客の都合で数量や納期の変更なんてしょっちゅうだったし。コンピュータの理不尽なまでの見にくいレイアウト、入力仕様などに人間が合わせなければいけないのであれば、それはコンピュータを使っているのでなく、使われているのである。人間をサポートし、生活を豊かにするためのコンピュータが逆に人間を苦しめてどうするのだ。
MacやWindowsのグラフィカルなOSが普及したおかげで、端末もパソコンに置き換わり、今ではもうちょっとはマシな発注システムになっていることとは思うけど、システムの作り方次第では端末がパソコンに変わっただけで根本的な問題は何も解決されていないなんてこともあり得るのだから恐ろしい。
terminal2もしその入力端末の画面レイアウトが仮にこんな感じだったとしたら、これだけでもずいぶん見やすくなり、それだけ誤入力が防げるはずだ。むろんまだまだ不完全ではあるが、ちゃんと顧客名や、コードに対応する製品名などが日本語で表示されれば入力時点でミスをチェックできるというものだ。いくら15年以上前とはいえ、大手コンピュータメーカーでこの程度のことさえできていなかったのだから驚きと同時に怒りすら覚えた。社内のシステムがこんな使いにくくて、顧客に対してどれほど使いやすいシステムを提供できるのだ?!

さて話を戻すが、今回のみずほ証券のシステムも、株の取引という非常に件数が多く、リアルタイムで間違いなく処理しなければいけない大変な業務をサポートするコンピュータシステムが、どれだけ間違いを防げるようになっていたのだろう。あからさまに怪しい数値の入力にはメッセージを出すようになっていたのは良かったが、残念ながら入力者はそのメッセージを見落としたようだ。はたしてそのメッセージは見やすかったのか? リターンキー一つで消えてしまうようなダイアログではなかったか? そもそも株の金額と数量の入力欄は位置がしっかりと分けられ、文字は大きく見やすかったか?
人間は間違いを犯す生き物である。だからこうしたシステムはできるだけ間違いが起こらないようにシンプルに作り、また間違った場合に容易に修正ができるように作らなければいけないのが原則だ。しかしそうしていないシステムが多いのではないか。それは画面レイアウトや色使いなどのほんのちょっとしたことで、容易にミスを回避できるような作りにできることも多いはずだ。今回、誤入力してしまったみずほ証券の社員一人を攻めるのでなく、同じようなミスが二度と起きないように今一度ユーザーインターフェースというものを考えてみるべきだと思う。人間が機械に合わせて無理な使い方をせずにすむように。

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