遠藤周作「イエスの生涯」
遠藤周作の「イエスの生涯」読み終える。
物語としての小説ではなく、イエスの存在と半生について解説している内容。
イエスについての本をまともに読むのは初めて。聖書も読んだことないし。
描かれているのは数々の奇蹟を起こした超人的な姿でなく、ひたすら無力で、何もできず、ただひたすら神の愛を説き、病いなどに苦しむ人々の同伴者でありたいと願った姿だ。
イエスは人々に勝手に救世主(メシヤ)に祭り上げられて、信望を失い、裏切られ、処刑される。
今までは「私はあなた達を救う」とか言って自分から積極的にリーダー的存在になっていったんだと思っていたので、その点がまず意外だった。
現代の新興宗教の教祖様なんかとは大きな違いだ。
反政府勢力で異端者との疑いをかけられ、処刑されてしまうのだが、巻き添えになることを恐れて逃げて行った弟子達にも、「主よ、彼らを許したまえ」と恨み言ひとつ吐かない。
その心のやさしさと、死に際して誰よりも徹底的にみじめだったからこそ、人の苦しみを理解してくれる存在として、死後も彼に救いを求める人達が大勢いるんだろう。
伝説的な奇蹟の数々はともかく、おそらくイエス自体は実在したであろう。
ただ、俺が知るような今日のキリスト教のあり方とは大きく異なった教えだったんだろうと思う。
約2000年前、神の子でも預言者でも救世主でもない無力な人間が、ひたすら謙虚に、相手の痛みや苦しみをわかろうとしていた一個の人間が真のイエスであり、少なくとも集団として自分の信仰を押し付けたり、支配や戦争を正当化するために利用されるとは思ってもみなかっただろう。
クリスチャンとして現代のキリスト教に触れてきた作者が、冷静にイエスについて分析してくれている。
俺にとっては、宗教というもののありかたを考えるきっかけにもなりそうだ。
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