こういう映画だと思っていた「二十四の瞳」
名前はもちろん知っていたけど、家にあった一度も読んだことない少年少女文学全集に収録されているのを気まぐれから読み始め、それが終わるとすぐにYouTubeで高峰秀子主演の映画も見てみた。
田舎の島の学校に配属された若い女教師が、幼い児童生徒たちとふれあい、短い間だが強い心の結びつきを作り、最後は互いに別れを惜しみつつ島を離れる。
というようなストーリーだと思っていたんだけど、そんな熱中時代教師編みたいな物語ではなかった。
田舎の学校に配属されて子供たちと触れ合うのは合っているけれど、一学期を終えたあたりで大石久子先生は子供たちのいたずらから大けがをして学校に通えなくなってしまう。
痛めた足でも通えるもっと近くの学校(高学年になると子供らもこちらに移ってくる)に移った大石先生は、数年後に少し成長したかつての教え子たちと再会する。
多くの教え子の家は貧しく、今の小学校を卒業した時点で進学をあきらめる者(女子に多い)、軍国主義が台頭してきた時期であり、軍隊に入隊を志願する男子などが出てきた。
些細なことからアカの噂を立てられ、嫌気が差したこと、また自身の結婚、妊娠もあって学校を辞めた大石先生。
その後戦争が始まり、夫が戦死、娘が病死。かつての教え子たちの中にも戦死した者、戦争でめくらになって帰ってきた者もいた。
戦後、すっかり歳をとり、心労からやつれが見える大石先生は、最初に赴任した田舎の学校でまた働けることに。
児童たちの中にはかつての教え子の弟妹や子供などもいる。
すっかり成人した教え子たち数人が就任祝いを開いてくれた。幼い時に一緒に写した写真を手に取り、めくらになった教え子が見えぬ目で「これが先生、これが誰々」と指でたどる。家庭の事情で音楽学校をあきらめた女子が歌い出す。大石先生をはじめ、皆は涙を流す。
といった話。一年程度どころか、20年近くに渡ってのお話。
大スジ的には反戦の内容なんだけど、押し付けるようなものではなく、親しい人たちを戦争で失いたくないというごく当たり前の感情、そしてまた生きていくために将来の夢も諦めざるを得ない子供たちの不憫さが描かれている。
映画の方も高峰秀子が若いキラキラした新任教師から老けてやつれた(といってもアラフォーくらいじゃない?)定年間近の教師までを上手に演じている。
子供のままじゃいられず、貧しさや時代に飲み込まれて色々なものを失っていく人々が出てきて、最後の方はずいぶんと目に涙を溜めながら見た。
内容はほぼほぼ原作どおりの素直な作り。カメラワークも同様に素直なので(最近のようにチャカチャカと切り替えたりしない)、落ち着いて見られる。
共演には笠智衆、浦部粂子、清川虹子、天本英世(大石先生のイケメン夫役)ら。寅さん…手品…高田純次に指輪を食べちゃった…死神博士…などと思いながら見ていたw
この「こういうのだと思ってた」シリーズ、やっぱり聞きかじりや先入観だけじゃなく、ちゃんと作品に触れることで知る良し悪しがあって面白い。
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